
*『海鳴』は、水俣病激発期に生まれ、幼少期を過ごした原告7人が、水俣病認定を求めて起こした認定義務付訴訟(「水俣病被害者互助会訴訟」)を支援するグループ「水俣病訴訟を支える会」の機関誌です。水俣病認定制度の問題や「水俣病被害者互助会訴訟」の争点など、水俣病問題の今がわかる貴重な資料です。また原告のみなさん自身の言葉にも触れることができるものです。「水俣病訴訟を支える会」から『海鳴』を転載してもよいとご提供いただきましたので、本サイトに順次掲載いたします。
(以下、『海鳴』12号の転載)
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水俣病被害者互助会認定義務付け訴訟控訴審第 6 回
2025年1月21日(火)第6回口頭弁論が福岡高等裁判所101号法廷室でありました。今回は原告6名が出席、水俣から山口弁護士、支援者らもバスに同乗しました。水俣、熊本、福岡、岡山、大阪などから多数の方が傍聴にかけつけていただきました。ありがとうございました。

今回、被控訴人から準備書面1、乙B245号証から282号証、乙C全1号証から4号証が提出されました。
控訴人(一審原告)からは 控訴人準備書面13(頼藤意見書に関する書面)、甲C全29号証の1の1から同6の4、甲C7第17号証及び同18号証(各書籍)を裁判所に提出しました。
次回:日時:2025年5月20日(火)午後2時半
法廷:福岡高等裁判所1階101号法廷
〒810-8608 福岡県福岡市中央区六本松4丁目2−4
佐藤英樹さん(口頭弁論後)
被告が提出した準備書面は、関係ないことも入っていて、水俣病のこと、水俣病のこれまでの判決を知っているのかと思った。水俣病、公害に対して何も思っていない、責任を感じていないと感じた、残念だ。これからも頑張るので、応援をよろしくお願いします。
原告(匿名)(口頭弁論後)
山口弁護士がバスに同行して、久しぶりの裁判、気が沈みかけていたが、活を入れてもらいました。応援してくれる弁護士や人たちの力があるのに、原告の私たちがこんな風ではだめだと思いながら来ました。 裁判が始まって、一発目の言葉に衝撃を受けた。(裁判長よりノートパソコン使用できないとの言葉)山口弁護の反論があったからいいが、どうして裁判長が一発目にいうのか、切り出されたのはショックなことで、そういう考えをもってどうでしょうかと配慮があって当然と思う。裁判は裁判長、裁判官、被告側、原告側、傍聴で戦っている場所なので、一方的な言い方は、命令的な口調にしか聞こえない。間違っていることは反論して、自分たちが納得するまで反論していくべきだと思う。
弁論前福岡県弁護士会館 301 号会議室で、弁論打合せで佐伯弁護士、康弁護士、山口弁護士から 原告・支援者たちに説明がありました。また、支援に来て下さった方からも思いを語ってもらいました。*発言を要約しています。
代理人 佐伯弁護士
今回、頼藤先生の当事者について水俣病だと考えている根拠となっている準備書面 13 と資料を提出。 被告からは年末に準備書面 1 が届いた。主に大阪別件の判決に対する批判を書いたもの。我々は、大阪の事件と似た主張はしているが、まったく同じではない。反論が私たちの主張に対する反論でもあるが、違うところもある。
代理人 康弁護士
ノーモア・ミナマタ近畿判決は、私たちが言った通りの判決が出ているが、細かなところまで同じ主張をしていない。それなのに被控訴人準備書面 1(県)は、近畿判決に 関連したこちらと関係ないことまで書いてある。曝露地域は感覚障害がめちゃくちゃ多いが、これを県はきちんと調べた結論ではない、という。また、公的検診の検査の仕方に問題がある。阪南中央病院は、ちゃんと数値化した検査をしている。公的検診では、 検診した医師の名前も出さない、墨塗りになっている。しかも公的検診では、どれくらいの刺激を与えたのかわからないから、本当に異常所見がなかったのかどうか、検証できない。異常所見があったとしても、右手の異常所見は何々病の時にでてくる、左手の異常所見は何々病の時にでてくる、両足は何々病である、などと、ほかの病気の可能性がある、というだけ。 近畿判決は追い風になっていく。大枠は同じなので、判決がちゃんとしたものが繰り返されるようにならないといけない。
代理人 山口弁護士
被控訴人は 5 年間、当方に批判に批判を続けているが、しかし被控訴人自身は、それでは「どのような要件があれば水俣病か」を具体的には言っていない。被控訴人は、結局、「総合的判断」をして、当方の水俣病を棄却したと言っている。現在の中居さんの事件でも、広告スポンサーはどこの会社も「総合的判断」で広告を控えたと言っている。 スポンサー会社が「総合的判断」するのは構わないが、被控訴人側(以下、水俣病行政。 政府、環境省、熊本県を示す)は、被害者を認定する責任があるので、「総合的判断」というのは抽象的な基準では、欺瞞であり、患者切り捨てです。 水俣病行政の認定の業務には義務と責任とが伴い、そのために認定には適切な基準・ 要件が必要なのです。しかし被控訴人業務は、臨床医学だけなので、客観的な、定量的な、水俣病の基準を措定することは、論理的にも出来ないのです。従って、被控訴人が 「総合的判断」と言うときは、水俣病の客観的な基準を作っていないことを自白し、被害者は水俣病行政のいい加減さにごまかされているのです。 問題は、患者判断の基準は何か?ということだが、水俣病行政であるなら、判断にかかるスピード、時間の制約がなければなりません。さらに、患者によって基準が変わっ てはならない、法の下の平等の制約があります。しかし被控訴人の「総合的判断」では、これらの制約を全く考えていない。行政責任として、認定手続は短期間に決定しないといけない。それは大規模公害、災害においては、再発防止、被害者の迅速救済、国民の福祉、生活を守る義務があるのだが、水俣病行政はそのいずれも考えず、患者切り捨てを 70 年間近く続けている。 認定手続に時間期限がなければ(現在の実態ですが)、100 年も経って認定されても、判決がくだされても、生きる被害者には意味が無い。水俣病行政は、政府解決策や特措法を、場当たり的に発出しているが、被害者達は水俣病行政から、あるべき福祉も受けていないので、二重三重の被害を受けている。 さらに、水俣病行政は、裁判に医学論文を山ほど提出しているが、彼らはそれで裁判を複雑、長期、混乱させて裁判所の誤導をねらっているのです。裁判は、医学論争をす ることが目的ではない。公害の被害者かそうでないかだけを判断すればよいのです。しかも時間がたつと、基準が変わる、組織や人が変わる、医学も変わるのですから、認定判断の実質的にはまったく違って来るのです。 そもそも、水俣病行政は法廷で反論して来ますが、70 年近く被害者を放置しておいて、今更、対等の地位で反論などゆるされない。これまでにいくつかの個別訴訟もあって、52 年判断条件は司法で批判されている。水俣病行政はこれら判例を完全に無視し、 「総合的判断」をしている。さらに水俣病行政は、当方の主張を「社会的コンセンサスを得ていない」などと言っているが、コンセンサスを得ていないのは水俣病行政の反論。 我々は、これら水俣病行政の欺瞞的な反論に対して、これから控訴審で徹底的に骨太い主張をしていかなければならないのです。
塚本氏(阪南中央病院)
裁判ずっと見てきているが、原告は水俣病の被害者だ。被告はあたかも加害者の立場であるはずなのだが、義務付け訴訟においては、自分たちが被害があったかないかを判定する側の立場なんだと、上に立った立場で裁判をやっている、被害者を多く作ってきた当事者であるのに。毎回裁判にきて、言ってやりたいなと思いながら聞いている。 裁判所も惑わされる。れっきとした加害者であって、原告たちは、家族や親せきに認定患者がいる。被害者と加害者の立場は明確だ。

〇今後の予定
被控訴人からは、これまで控訴人(原告側)が提出した書面に対しての追加反論書が4 月末までに出される予定。また、被控訴人が提出した第 1 準備書面に対して 4 月末を めどに原告側も反論書を提出する。
次回期日は、2025 年 5 月 20 日(火)午後 2 時半から、福岡高等裁判所です。皆様の 傍聴をお待ちしております。
*ご報告 原告の倉本氏が 2024 年 9 月 21 日付で、水俣病被害者互助会の脱会届を提出されました。また、2024 年 12 月 9 日付けで福岡高等裁判所に「訴訟代理人解任届」を提出されました。引き続きご支援をお願い申しあげます。
水俣病訴訟を支える会事務局より
ご支援ありがとうございます。水俣病訴訟を支える会の代表が花田昌宣に変わりました。
被害者が声をあげ続けることで、水俣病を終わらせることに歯止めがかかります。被害者だけが頑張るのではなく、私たちみんなで頑張ることに意味があります。これからも、ご支援をよろしくお願い申しあげます。(事務局田㞍)
<支援カンパの振込先> 銀行名:肥後銀行 店番:160 預金種目:普通 店名:東支店 口座番号:1479468
宛先:水俣病訴訟を支える会
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